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しばしの間…場に奇妙な静寂が訪れた…
誰もが…上級大将とシュタウフェンベルク以外の誰もが…
口を開こうとしなかった。
どれだけの時間が経ったのだろうか…
いや…正確に言えばその静寂が支配した時間は、ものの1~2分のはずであったが…
彼の二人以外には永遠とも感じられた時間であった。
程なくして…その重苦しさに堪えれなくなったのか…一人の軍人が口を開いた。
『総統を除去…いや、退陣して戴く手筈は?
出来ているのかね?シュタウフェンベルク大佐?警戒は厳重で難しいかと思われるが…』
シュタウフェンベルクは平然と…
『爆殺します、ラステンブルクのヴォルフ・シャンツェ(狼の巣、戦時下における総統大本営)に呼ばれた時が、チャンスだと思われますが…』
と、言ってのけた。
『ヴォルフ・シャンツェの警備は厳重極まり無いと思うが…シュタウフェンベルク大佐、如何な手段を用いるつもりかね?』
合点の行かない軍人は直も質問を続けた。
これに対しシュタウフェンベルクの回答は明快であった。
『私がアタッシュケースに入れて、彼の場所に持ち込みます。
アタッシュケースの中身は、総統に見せるための資料と言えば…警備の者は確認すらしないでしょう。
これは過去に実証済みです』
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