第一章…1944年6月20日

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事実、過去にシュタウフェンベルクがラステンブルクに赴いた際…彼の地の警備兵達は、手荷物検査などを一切せず… 身分証の提示と、口頭で出頭理由を話しただけで…フリーパスで通したという経緯があった。 シュタウフェンベルクはそこに着目したのであった。 それを聞いた一同は、その警備体制の甘さに驚き、それに着目したシュタウフェンベルクの大胆さに頼もしさを覚えた。 そして、また別の人物が口を開いた。 『総統閣下御退陣の後…政府の首班は誰がやるのかは…決めておられるのでしょうか?』 これももっともな質問であった。 ヒトラー亡き後の新政府首班には… かなり大変で過酷な仕事が待ち受けていたからで… ひょっとしたら…戦犯として処断される恐れもあったからである。 故に…そんな難事を引き受ける人物がいるかどうか…はなはなだ疑問であった。 『それであれば…新政府の首班は私が引き受ける事になっているが?』 そう答えたのは上級大将だった。 『戦犯として処断されるという可能性も…否定はしない、しかし、ドイツが未曾有の破壊から救われるのであれば… 私の命など安いものだ。』 上級大将はそうきっぱりと言い切った。
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