その雫を

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 来た道を戻っていく僕を、何台もの車が通り過ぎていく。僕は十字路を右に曲がると、またあの花屋の前を通った。 「あ、」 目の前を見ると、僕の30mぐらい前方に美紀の姿が見えた。手には学校の鞄と、何か入った紙袋を持っていた。 「タカ、ちょうどよかった。これ、忘れ物」 差し出された紙袋には僕のブレザーとズボン、ワイシャツにネクタイなど、僕がシャワー室に忘れた制服が入っていた。 「あ、これ……なんで?」 「和哉が部活終わってシャワー室使ったときに見つけたんだって。私が家近いからって、すれ違ったときに渡されたの」 僕は紙袋を受け取り、美紀の顔を伺った。 「和哉と話したんだ。で、他には何も話さなかったの?」 「他にって、なにが?」 「ほら、すれ違ったってその時二人だけでしょ? まぁいろいろとあるじゃん」 美紀に茶化すように聞いたら、渾身の前蹴りをくらい、僕は突き飛ばされた。 「あーうっさいな、もう! 用はもうないんだから早く帰れ、このバカ野郎!!」 「……ててて、はいはいわかりましたよ」 僕は顔を真っ赤にした美紀を見て笑いながらその場を去った。 「なにもわかってないんだから!! …………本当、なにもわかってない」 「あー? なんか言ったぁ?」 「うっさい、早く行け!」 また蹴られそうになった僕は、慌てて家に帰った。 家に着く頃には、空はすっかり暗くなり、星たちがいくつか輝きを魅せていた。
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