僕はきっと

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 同じみの登り坂、今日の天気は雨で僕は片手にビニール傘をさし、坂から流れてくる水を避けながら上がっていく。 ふと、前を見ると僕の少し前を、他の生徒より少し大柄の男が歩いていた。 僕ははや歩きをし、その男の顔を確認すると、そいつも僕のことに気がついた。 「よう、今日は雨だなタカ」 「和哉、それぐらい見ればわかるよ」 黒いコオモリ傘を片手に、眼鏡をかけた和哉は、そりゃそうだと笑っていた。 雨は一定の強さで降っている。強くも弱くもない。 「今日の部活は中でトレーニングだな」 「俺、サッカー部じゃないから関係ない」 「別にいいじゃんかよ。少しは話し合わせろよ」 ニッコリとした顔で傘をくるりと回した。僕の傘の上空を、その滴が飛んでいく。 「そういえば、昨日はありがとな。制服見つけてくれたんだろ」 「あぁそれなら、美紀にお礼言っとけよ。あいつとすれ違ったときに、わけ話したらあいつが家近いからって持ってってくれた」 「へぇー」 あれ、そうだったかな? なんか違ったような…… 「礼、ちゃんと言ったか?」 「あー、言って……なかった」 軽くため息をつくと、和哉はまた口を開いた。 「この雨じゃ、さすがに自転車のやつはいないな」 「まぁ、もともと少ないしね。こんな雨の日に自転車で通学するやついるか? 普通」 その時だった。僕ら二人の横にある車道を、物凄いスピードで灰色の影が通りすぎた。 僕らは呆気にとられ、立ち止まってしまった。
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