僕はきっと

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 灰色の物体は自転車に乗り、僕ら前方にいた生徒たちも次々と抜かしていく。この登り坂は見た目だけでも急なのに、自転車の速度が緩むことはなかった。 「はやっ」 「はやっ」 思わず和哉とハモってしまった。しかし、あの速さは尋常なものではない。どこからあんなスピードが出せるのだろう。その物体はすぐに僕らの視界から見えなくなった。 「いたな、自転車通学」 「……だな」 僕らは立ち止まっていたことに気が付き、また歩き出すと今の物体。失礼、生徒について話し出した。 「あれって風見だよね?」 「そうそう、風見怜。絶対そうだろ」 和哉はまた傘を回す。傘から飛ぶ滴はまた僕の傘の上空を……、どうせ身長差ありますよコンチクショー。 「あいつって雨とか気にしないんだな。まぁ自転車のときの性格はすごいって聞くし、」 それも妹のためなのだろう。 そこまでするのか。 「まぁ、俺たちが気にすることじゃないよ」 「ま、そうだな」 僕たちは、そのまま長い坂を登りきり学校についた。 傘の雨粒を振り払ったあと、下駄箱の横の傘立てに傘を置き下駄箱から学校スリッパを取り出す。 階段を上がっていき、僕らの教室がある3階で廊下に出て、そのまま一番奥にある教室へと向かう。 廊下は雨の日になるとなぜか濡れていて、滑らないように一苦労した。
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