僕はきっと

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 開けっ放しのドアから教室に入ると、当たり前だがいつもの顔ぶれだ。和哉は前の席、僕は後ろのお互い窓側の席につくとちょうど同時に腰におろした。 「おはよう」 小さな声がした方を振り向くと、黒い長髪に片方の髪を青いリボンで縛った、肌の白い女の子が座っている。 「あ、水城さんおはよう」 僕が返すと、彼女はニッコリと笑みを浮かべた。 次の瞬間、左の肩を何かで叩かれたような衝撃がはしる。 「おい、私がいるでしょうが私が! 隣を無視するなよ」 「殴らなくても。あ、いえ、おはようございます」 「よろしい、許す」 危ない危ない、美紀の打撃をもう一発くらうところだった。美紀自身には悪気はないのだろうが、地味に痛い。食らった左肩もまだ打撃の重さが残っていた。 教室に担任が入って来ると、立っていた生徒も席につきHRが始まる。号令はない、担任が勝手に必要事項を口にだし、それで終わりだ。 「えー、今日から文化祭の準備に入る。授業がないからってはしゃぎ過ぎるなよ、以上」 担任は休みがいないことだけを確認したあと、教室を出ていった。 担任が出た後、教室は一気に盛り上がる。その中で僕だけが呆気にとられ黙っていた。 「あのー美紀さん、文化祭って?」 隣の美紀に片言のような発音で聞いた。美紀はため息を一回だけつくと、やれやれというような顔をした。 「あんた、いつもHR寝てるから知らなかったんだ。今週の日曜日に文化祭あるからそれまでその準備。ちゃんと手伝いなさいよ!」 そうでしたか、そうだったんですか。知らなかったのは俺だけですか…… 活気づく教室に、僕だけがまだついて行けなかった。
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