安楽

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AM6:00   瞼がまだ重い中、PiPiPiPiという単調な機械音に手を伸ばす。   ボタンを押し、目覚まし時計を止める。   冷えた外気は、私を布団の中に留める。   瞼までも、凍ったように開かない。   続いてくる、二度寝の幸福感。   また、機械音。   ボタンを押し、時間を確認する。   『AM6:00』   時間が経っていない。   まだ眠れると、笑みを浮かべ眠りにおちる。   機械音。   時効はAM6:00。   時間が進まない。まだ眠れる。   幸福感。           病院の一室。   医師が、眠っている人を起こさないかのように静かに言う。   「死亡が確認されました。十三回目に押したボタンが、生命維持装置のオフボタンです。無事、二度寝の幸福感に包まれ、旅立たれました」   医師が直接手をくださない安楽死が今、人を送り出した。
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