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アパートの一室、夫婦がテレビを見ている部屋に電話が鳴り響いた。
夫である男が受話器を取る。
「もしもし」
「どうも、こんばんは」
「ご用件はなんでしょう?」
「実は奥様のことなんですが」
「妻がなにか?」
「ええ、奥様を殺して差し上げようかと」
「ふ、ふざけるな!なんのつもりだ!!」
「まあ、落ち着いてください。あなたは奥様と結婚して十年経ちましたね。そこでそろそろ他の女に気が傾いたのではないかと」
「そんな気はない!!今に十分満足している」
男はそう言って乱暴に電話を切った。
興奮している夫に妻がきいた。
「どうしたの?大声なんか出して」
「なに、ふざけた間違い電話だ」
男はそう答え、テレビに目をやった。
数分後、また電話が鳴り響いた。
今度は妻が出た。
「もしもし」
「どうも、こんばんは」
「あら、その声は。やはり今の電話はあなただったのね」
「はい。ご主人はいかがで?」
「ふふ、怒っているわ。でも、あの様子だと大丈夫だったようね」
「そのようです。まだまだあなたのことを愛しているようです」
「よかったわ。ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ今回我が有限会社の〝夫婦円満プレゼン社〟をご利用いただき誠に有り難う御座いました。では、末永くお幸せに」
妻は受話器を置き、テレビを見ている夫に言った。
その一言は夫を喜ばせた。
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