不明

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目の前のそれが何なのか分からなかった。   のどの辺りまででてきているのだが、なかなか思い出せない。   それは珍妙な形をしていた。   手の平に納まるくらいの大きさ。   珊瑚と蜂の巣の子供はこんな形になりそうだ。   知ってはいるが、思い出せない。   記憶に穴が空いたような感覚。   それはまるで、その穴にはまるような気もする。   記憶の具現化、そんな形。   しかし思い出せない。   具現化だとしたら、目の前にあるのだからすでに分かっているはず。   いっそ飲み込んでしまおうか。   そう考えた。   しかしそれはのどにつまりそうだ。   そんな形。   思い出せない、のどにつまっているような感覚。   思い出せない、分からない。   分かった。   分かった、それは、分からない記憶の具現化だ。
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