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風が強い夏の日だった。
両開きの窓を全開にして、そこに大きな氷の塊を置く。
氷にはロープの一端を閉じ込めておいて、別の一端は、天井に付けたリングに通す。
その先ではナイフが垂れる。
床。ナイフの真下、僕は両手を広げ足を閉じ十字架のように仰向けに寝転ぶ。
風が強く夏真っ盛り、あと数分もすれば氷は溶け、ロープが自由になり、その先のナイフが僕の胸元めがけ落下する。
それまでの間、静かに目を閉じ、何も考えずにいる。
目には暗闇。
耳には風の轟音。
鼻には清々しい香。
口には嫌な渇き。
体中には暑さによる汗。
カタン、と歪んだ氷が傾く音がした。
ロープの、ナイフの束縛が溶けた。
ロープの先のナイフが落ちる。
僕は死を覚悟した。
風が強い日だった。
突風が全開の窓から入り込み、ナイフが揺らぐ。
目を開けると、ナイフが体の横に垂直に刺さっていた。
僕は生きることを覚悟した。
風が強い夏の日だった。
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