蹴球

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グラウンド。   歓声が溢れ、選手の声が飛び交う。   サッカーの試合が行われていた。   サッカーといったものの、それは私達の呼称であって、彼らには違う呼称があるのだが。   青のチームと、緑のチームが、激戦を繰り広げていた。   どちらが優勢かわかるよう、ボールには仕掛けが施されていた。   青が蹴れば青が、緑が蹴れば緑が、それぞれの色にボールの蹴られた箇所が染まる。   見るかぎり、青7、緑3の比率で青が優勢だった。   突然、大きなどよめきが起こった。   グラウンドの上空にボールが蹴りあげられ、やがて空に消え見えなくなる。   しばらく時間が止まったような沈静が辺りを包んだ。   ボールが落ちてくる気配は一向にない。   やがて審判が新しいボールを導入し、試合は再開された。   係りの人が、空に飛びボールの行方を追う。   一方ボールは、空を越え宇宙に出る。   宇宙の乱気流に捕まり、ある地点で止まる。   青と緑のボールが、宇宙に浮かぶ。   やがて二本足の生物が住み着く。   いつ巨人がボールを回収しにくるとも知らずに。
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