2(バベルの塔は崩れ落ちる)

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ところがトキは、整えられた眉をハの字すると 「すみません、俺は敬語が話しやすくて……でも、名前だけはりぃと呼びますね」 「へぇー、凄いな。あたしなんか敬語なんか数えるくらいしか使ってないぞ」 りぃの返答にクスクスと運転中にも関わらず、口元に手を添え上品にトキは笑った。 「……ところで、今どこに向かってるんだ?」 夜の人工的な明るさで彩られた大通りを走っている事は確認できるが、今この車がどこに行こうとしているかは解らない。 「……市役所ですよ」 ブレーキで少しだけ体が揺らされ、一拍ほど置いてから自分にはあまり縁のない単語に、りぃはオウム返しするようにもう一度聞き返す。 「市役所……?」  
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