2(バベルの塔は崩れ落ちる)

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ーーーーーーーー 市役所に着いた時りぃは常に俯いていた。一向に顔を上げる気配のない彼女に、トキはうっすらため息を吐いて 「りぃ、出しますよ。よろしいですか?」 最終確認のつもりで聞くとりぃは顔を上げ鋭い目つきでトキを睨んだ。 「良いよ、別に。そうかあれか?あたしが出すなと喚いたら、あんたはあたしを解放してくれるのか?」 愛おしい唇は何とも毒々しい言葉を吐く。無意識に紡がれているのだとしても、心は痛々しい音を立てる。トキは困ったように眉をハの字に下げた。 「……早くその口から、俺に対する愛の気持ちを聞きたいものですね。」 「……っ!そ、そんなのいつまで経っても聞けるわけないだろ!」 どこまでも甘いトキの声にりぃは顔を真っ赤にさせふんと鼻をならすと、横を向いてしまった。トキにとってその行動すらも可愛いと思える。 「さっ、提出しますよー」 そして自分のものよりも二回り程小さな手を掴むと窓口に向かった。  
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