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お願いします、と窓口の女に提出すると顔を赤らめながら短く返事をし
「おめでとうございます。」
と心あらずに祝福の言葉を述べた。そういう規則なのか知らないが思ってないなら言うな、とトキは心中で毒を吐いた。
「……心にもないのなら、これからは言わない方がよろしいですよ」
トキの声に驚いて女は顔を上げた。
「俺は、この人を愛してます。だから心からの祝福じゃないと要りません。それが例え祝福の声が無くとも……」
「なっ……」
「ちょっ、トキ?!」
「では、よろしくお願いしますね」
トキはそれだけ言うと踵を返した。なぜなら周りの男がりぃを見てニヤニヤと笑っているのがわかったからだ。
冗談じゃない。りぃをそんな目で見るな、とばかりに睨みを利かせるが、本人は全く気づいていない。
りぃは少々自分自身に関しても言えることだが、容姿に自信が無さ過ぎる、無自覚なのだ。だから、隣りでいてたって隙が山ほどある。
自分の隣りに居るときならいいが、公共の場では頂けない。トキは受理された事を確認するとりぃの腕を掴み、足早にその場から去っていった。
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