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熱い視線が胸を突き刺すように見つめる。
「……俺と、聯さん……キスは……、どちらが巧かったですか?」
掠れた声は色気があり、妖艶に聞こえりぃは肩を震わせる。
どうやら、トキには自分の思考はお見通しらしい。
押し黙るりぃにトキは答え欲しさに催促する。りぃは答える事が、出来ないのである。
それは信じがたい真実であったから。
それは許し難い現実であったから。
りぃがトキにキスにされていた時、実際りぃは彼に溺れた。それはトキの技巧であろうか、吐息であろうか、言葉であろうか。
しかしそんなものは
どうでも良かった。
りぃはもう誰も愛さないと頑固に決めていたのに、逢って数時間の男に
その堅い信念が打ち砕かれようとしているのだ。
今一度トキの方が良かったと言えば、彼はきっとまたキスをする。積み上げられた、脆いバベルの塔のようなりぃの心にそれはあまりにも残酷すぎるのである。
「……りぃ、言い……っ!」
りぃはそれ以上トキが言葉を発する事を拒むため、彼の唇に一瞬だけキスをした。
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