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そして涙声になりながら言葉を紡ぐ。
「……今は、……聞かないで……」
溢れる涙は堪えきれず頬を伝おうとしていた。トキは眉をハの字に曲げ、彼女の頬を伝うそれを舐めとった。
「……すみません、焦りすぎましたね……」
ギシッと音を立て、シートは軋んだがトキは気にせず自分の席についた。
「……俺の家に行きます。シートベルトを締めなさい」
倒されたシートはトキによって起こされた。先ほどの低い声色とは違い柔らかい声で指示される。
りぃは無言のまま、シートベルトをすると窓に目をやり、トキを見なかった。その一連のようすを見終わるとトキは少し、肩をすくめエンジンを掛けた。
窓は反射してりぃを写した。
りぃは泣いた。夜の街の光を見ながら。
発進してからすぐに頭をゆっくりと、トキに撫でられた。今は、その温もりに縋りたい……りぃは甘えるよにトキの手に頭を寄せた。
トキは優しく笑うと家までの帰路ずっと撫で続けた。
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