1(ソレは音も無く)

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「来るときが来たって事か…… すぐ行くからちょっと待ってな」 どうやらあたしには感傷に浸る時間さえ、用意してもらえないらしい。 憎まれ口もそこそこにりぃは溜め息を一つ吐き、天井を見上げる。それから騒ぐテレビを消しのっそりベッドから立ち上がった。 少し名残惜しそうに自室のドアを閉め、広い廊下を歩きたどり着いたのはこの家でも一番大きな客間。 一度ゆっくり息づくと、その小さな拳を精一杯の力で握り締めた。 綺麗に伸ばされた爪が 手のひらに食い込んでも なお力を入れたまま。 「親父、入んぞ」 彼女はノックもせず重厚な扉を、蹴入るようにして乱暴に入室した。 ソファーに向かい合うように座る2人の男が一斉に、その礼儀の欠けた少女に目を向けた。 「りぃ、お客様の前だぞ。言葉遣いを改めなさい。申し訳ありません如月様……」 ふくよかなりぃの父は一度も目を見ることなく、如何にも業務的な口振りで注意した。  
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