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りぃの父親は顔を真っ赤にしてりぃに殴りかかった。
自らの失態に恥じているからか、過去を悲哀したからか、定かではないがこの現実にりぃは慣れていた。
いつもの事だった。
気に食わなければ、殴る。機嫌の悪い時には蹴られさえした。口では強く言えても、まだまだ彼女は子どもなのだ。
「恐怖」というものが、一度でも芽生えれば情けないくらい体は反応し、縮こまる。
それに、大人と子ども、男と女。圧倒的な力の差がありすぎる。
日常とは言え、恐怖である父親の暴力に反射で目を瞑った瞬間、来るはずの痛みはなかった。
「……薙さん、今からこの人は俺の妻です。手を出すことは許しませんよ?」
今まで口を閉ざしていたりぃの夫となる人物が父親の手をがっちりと掴みりぃの頭上で停止している。
その言葉を聞き父親はその手を忌々しそうに、見つめてから渋々下げた。
それはもう悔しそうに……
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