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「キール」
向かいから歩いてくる影を見つけて、キルは歩く足を速めた。
「社長」
小柄の主を見つけて、キルは急いで自分の傘を差し出す。
「私が迎えに来るまで、会社で待っていて下さいって言ったじゃないですか」
「そろそろキルが来るかな~と思って、ちょっと外に出てみたんだよ」
DA本社から数メートル離れた歩道で、ダイとキルは一つの傘の下、互いを見つめる。
「クリスマスまで残業で会社で缶詰なんてさ。他の社員はもう帰っているのに、うちの秘書さんの強行スケジュールに本当、泣かされた」
両手で顔を覆い、泣き真似をするダイにキル深くため息をつく。
はたからみると兄弟に見える二人だが、社長と秘書という関係でありながら、恋人という特殊な関係でもあった。
「社長が書類をどんどん溜めるから、こんな結果になったんですよ。社長の仕事だったお歳暮配りも、ようやくさっき終わって、…私は社長に泣かされそうです」
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