1人が本棚に入れています
本棚に追加
「とにかく、早く帰りましょう。社長が風邪を引いてしまいます」
「ねぇ、キル」
駐車場へ向かおうとするキルの腕を、ダイが掴み引き留める。
「お腹が…」
「えっ?」
ダイはそう言うと、突然お腹を押さえその場でしゃがみ込む。
「社長!?」
キルはダイの異変に慌てて傍へ近づき、傘を差しながらかがみこむ。
「どうしたんですか」
お腹を押さえてうずくまるダイに、キルが心配そうに語りかける。
「お腹空いたから、ちょっと味見」
「!?」
そう言った瞬間、ダイはキルのマフラーを掴み、ぐいっと顔を引き寄せ唇を奪う。
「んっ……!」
キルは目を見開き、間近にある端整な顔を見つめる。
互いに冷えた体の中で、そこだけが柔らかで温かな熱を帯びた。
「……っ!」
街の公道で堂々とキスを続けるダイに、キルはなんとか逃れようと顔を横に振る。
幸運にも傘と雪の効果で、その行為に誰一人気づく事はなかった。
「社…長っ!」
ようやく自由になって、キルは頬を紅く染めながら抗議の声をあげる。
最初のコメントを投稿しよう!