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パーソナル・コンピューターに映し出されるスクリーンが点滅すると同時に、小さな電子音がシグナルのよう鳴る。
その音に気づき、ウィルス学の本を読んでいたLは、ゆっくりとそれを本棚に再び戻す。
ジーンズのポケットに両手を入れ、飛び移るようにソファーに座る。
立て膝でじっとスクリーンの画面を見つめると同時に、ソファーの横にあるテーブルから、山のように連なっている氷砂糖を一つ口に含む。
「エボラ出血熱とインフルエンザの強力なウィルス…これが蔓延したら、世界は滅亡ですね」
冷然としたその声音(トーン)はいつもと何ら変わらない。
Lはカリッ…と右手の親指の爪を噛むと、人指し指のみの独特の仕草でキーボードを操作する。
「私も残された時間は少ない。ですが…」
人差し指でENTERキーを押すと、氷砂糖の横にある写真立てをそっと持ち上げる。
そこには、微笑んでいるワタリの姿があった。
写真立てを見つめるLの瞳が、まるでワタリの魂が宿っているかのように優しく穏やかになる。
最後の敵は、人間の手によって作り出された新たな『死神』。
デスノートに書いたように、安らかに眠る事は不可能かも知れない。
それでも。
「目の前にある命を、諦める訳にはいきません」
小さく呟くと、Lは写真立てを元の位置に戻す。
新たな決意を胸に、Lは部屋を後にした。
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