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珈琲の入った紙コップを2つカウンターに載せ、それらを挟んで私も座った。
カウンターの上には珈琲と図書カードやペン立て等の他に、四百字詰めの原稿用紙があった。
彼女の前にある紙は彼女の物で、そこに書かれる物語も彼女の作品だ。
「いただきます」
と珈琲を一口飲んで、彼女は原稿用紙を埋める作業を始めた。
「あのさ」
私は彼女の女性らしくない鋭い文字を眺めながら言った。
「何でここで書くの?」
彼女は手元を見たまま、そして動かしたまま答えた。
「雰囲気」
「それならあっちの窓際の机とか、街の図書館の方が良いんじゃない?」
学校の図書室の貸出カウンターは、執筆環境としてはどうなのかと私は思った。
「良いじゃん別に。どーせ放課後はおろか、昼休みにだって人来ないんだし」
それはそうだが、図書室に机のある教師として私は少し、悲しいような悔しいような気分になった。
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