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「こんにちは」
とカウンター脇から声がした。
別に図書室の利用者は彼女だけではないのだと、落ち込みかけた心が僅かに上向く。
「こんにちは」
私は今し方やってきた男子生徒に挨拶を返した。
彼はカウンターに近い長テーブルの、カウンターに近い位置に座った。
肩から鞄をおろして脇に置く彼にカウンターの彼女は一瞥くれて、私を見た。
「図書室に来るのって、私とアイツ以外に居るの?」
上向きかけた私の心がぽとりと落ちていく。
哀れみ混じりの視線が痛くて、私は無言で珈琲を啜った。
そんな私の代わりに答えたのは長テーブルの彼だ。
「一年とかたまに来るだろ」
「たま~に、ね。そんでロクに本も読まずにしゃべくって帰る、と」
「お前だって読んでないじゃん」
「私は良いの書いてるから。ってかあんただって読むの自分で持って来たのばっかじゃない」
私は二人の会話を聞きながら、図書室とは何だろうと考えていた。
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