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この図書室はとても静かだ。
二人の常連を除いては大して人は来ず、その二人も今は「人が来ないのは好都合だから別に良いや」と会話を終わらせ無言だ。
ペンが紙上を走る時と、ページがめくられる時、珈琲を飲む時以外に音はない。
男子生徒が鞄から出した文庫本は彼自身が購入したもので、彼が図書室の蔵書に手をのばす事は殆どなかった。
以前彼にも「何故ここで?」と聞いた事があったが、「図書室は本を読む所でしょ?」と言われてしまった。
自分の部屋では読まないのかと聞けば、彼は「図書室の雰囲気が好きなんです」と誰かみたいに答えたのだった。
私は黙々と手元を見つめる二人の生徒を眺めながら、人の来ない図書室でただ珈琲を飲んでいた。
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