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やがて図書室を朱に染めていた太陽はその身のほとんどを沈め、六時を告げるチャイムが響いた。
女子生徒はペンを置き、男子生徒は本を閉じた。
二人が溜め込んだ息を同時に吐き出して、私も遅れて息をついた。
「ところで」
その私の声が唐突だったのか、二人が素早くこちらを向いたのはまた同時だった。
「何?」「何ですか?」とこれまた合わせての声に私は少し笑い、それから聞いた。
「いや、二人が言う『図書室の雰囲気』って、どんなものなのかなって」
二人はやはり同時に互いの顔を見合わせて、離して、黙り込んだ。
難しい質問だったのかもしれない。
もしかすると彼ら自身も分からないのかもしれない。
何故この場に足が向くのか。
「何となく」では格好悪く、或いは不適切で、それよりは「雰囲気」の方が答えに近かったのか。
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