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ケンとの接触。
今日の仕事が終わり、ケンは自分のマンションに戻った。
ポストの中には新聞やダイレクトメールの他、鷹取家の顧問弁護士である中川享輔や薫子と息子たちの人間名義の郵便物も届いていた。
郵便物を開けると、鷹取側は養子縁組の抹消及び遺産相続の放棄の手続を取って欲しいという内容の脅迫めいた手紙で、中川からの郵送物は、本日付けで裁判所から正式に降りた鷹取家との養子縁組と遺産権利を証明するという内容の手紙だった。
「懲りない奴らだよ。」
中川の手紙は机の引き出しに入れ、薫子や息子たちの手紙は粉々に破くとゴミ箱に捨てた。
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、ごくごくと音を立てて飲むとケンは机の上に飾っている写真立てを手に取る。
太陽な笑顔を浮かべる少年を中心に、右手には中年の男性が。
左手には穏やかな笑みを浮かべている女性が笑っている。
その写真立てをジーッと見つめていたケンは、元の位置に戻すとベッドの上に寝転んだ。
電気もつけていないので、真っ白な天上は灰色のように見える。
天井を眺めながら、ケンはふうと溜息を付く。
目を閉じれば、二ヶ月前の出来事が甦ってくる。
思い出したくもないおぞましい出来事。
玲司に好かれているのは知っていた。
しかし、自宅に呼ばれて食事をご馳走になった後、まさか強姦されるなんて思ってもいなかった。
好きでもない男に犯されながら、ケンは必死で声を堪えた。
自分は快楽主義ではないと無言で訴えるためだ。それすら、無駄な抵抗になってしまい、無理やり関係を持つことになってしまった。
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