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それから二年。
経営は順調にいっているが、彩は目覚めない。
精神的ショックが原因と医者に言われた。いつ目覚めるかすら分からない現状に苛立ちながら、アヤは仕事に励んでいた。
そんなある日のこと。
刑事時代の同僚で、現在は所轄の捜査一課の係長に昇進したヨージがアヤを尋ねに来たのだ。
メールや電話ではたまに連絡を取り合っていたヨージが、わざわざ足を運んでまで事務所を訪ねるのはおかしいと思いながらも、アヤはヨージを中に案内した。
「相変わらず女っ気のない事務所だなあ。」
「ヨージ。茶化すために来たのか?」
「おっと。冗談が通じないのも変わらないか。」
「ヨージ君!これ以上アヤ君を怒らせないで!」
オミの一括で二人の他愛もない会話は終了した。
何気にオミには逆らえないアヤとヨージである。
「まあ、お前に依頼したい件があってさ・・・。」
「?」
ヨージは持っていたA4サイズの茶封筒の中から薄めの冊子を取り出すと、アヤとオミの前に差し出した。
テーブルの上に置かれた真っ白い表紙の冊子を見て、アヤは怪訝な表情を浮かべた。
刑事であるヨージが何故、私立探偵であるアヤに依頼をするのか。
警戒しながらもアヤは黙っていた。
「お前のことだから、警察が何で民間人を頼るのか不思議だろうな。」
「当たり前だ。」
「でも、どうしてもそれは警察では介入できねえんだ。」
「・・・・・上層部関連か?それなら俺は断る。俺がどんなに警察上層部を憎んでいるのか、知っているだろ?」
「俺だってそこまで馬鹿じゃねえ。逆に、上層部は放っておけだってよ。」
「・・・・・・?」
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