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アヤは更に疑問を抱いた。
警察上層部が放置するような事件があるのだろうか、と。
アヤはヨージから詳しく話を聞くことにした。
事件は数ヶ月前に遡る。
ある資産家が自宅のベッドで全裸死体となって発見された。
資産家の名前は鷹取玲司。七十歳の男性である。
発見したのは資産家の夫人で鷹取薫子。外傷もないことから発見当初は自然死だと思われていた。
ところが死体を持ち帰り鑑識が調べたところ、玲司の体内から致死量の睡眠薬が検出されたため、自然死ではなく殺人及び自殺の両方の線が浮かび上がったのだ。
自殺の方面で調べたが、玲司が重い病気で悩んでいたことや精神的な悩み、仕事のトラブルでの悩みではと、警察は薫子や使用人や資産家が経営している会社の社員に事情聴取を取ったところ、自殺する原因はないと断言した。
殺人の方面でも捜査を行ったが、全く該当者が見つからなかった。
動機も犯人像も浮かばないまま、警察は可能性がある限り捜査を続けていると、鑑識から衝撃的な事実が発覚したのだ。
玲司の体に付着していた体液が、彼自身の体液ではないこと。
また、玲司が発見されたベッド付近には女性と一緒にいた形跡がなく、仮定として出した結論とは、玲司は同性愛者で犯人は彼と関係を持った男性なのではという線が浮上したのだ。
まさかと思いながら、再度薫子や使用人や会社の人間に事情聴取を取ったところ、ある人物が浮かび上がった。
その人物とは、亡くなった玲司が通っていたスポーツクラブのインストラクターであるケンという青年だ。
薫子の話によると、殺された玲司がケンを連れてきたのは二ヶ月前。
病死した友人の忘れ形見で、養子縁組を取ることに決めたと一方的に話を薫子にしたという。
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