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はじまり
「もう…やめよう」
「………」
「やめるって言ってよ…誰も傷つかんでいいやん」
愛の部屋。
いつの間にか日は西に傾き部屋は薄暗い。
今日はコンポから流れる音楽もなく、静まり返った部屋の中には愛の鼻を啜る音と、秒を刻む時計の音だけが力無く響いていた。
口をつくのは俺の絶望にも似た溜め息だけだ。
ふと窓へ目を移す。
真っ赤に染まる夕刻の空が余計におれの胸をしめつけた。
「俺たち終わると?」
愛は自分の膝に置かれた俺の手を強い力で握りしめ…うつむき…寂しげに目を閉じた。
あの日見た、淡いピンクの中の、横顔の女性の様に。
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