第四章:揺れる想い~告白編~

4/10
前へ
/93ページ
次へ
心配そうにこちらを窺ってくる野口に、華乃は緩く首を左右に振った。 「これが大丈夫そうに見えますか?私は別に超人って訳じゃないんです。もし相手があと一人二人多かったら、危いところでした」 「……いや、もう充分だと思うが…?」 周りを見渡した野口が言う。敵を全滅させておいて何が弱いと言うのだ。 「体力がないんですよ私は。悔しいことに。いっそ男に生まれていればどんなに良かったか」 「天下でも取る気かよ」 心の底から頼む。やめてくれ。 「まぁ冗談はさておき。貴方、これからどうするんです?」 「俺か?とりあえずは、先生の後を追うつもりだ」 「ふぅん…いいんじゃないですか?それで。貴方みたいな真面目な人が側にいれば、あいつの性格も少しはマシになるかもしれませんし」 「どうだろうな。俺が側にいようがいまいが、先生はきっと変わらない気がする。けど、それでもいい。俺は何があっても先生についていくだけだ」 「……殊勝な心がけですね。あんな奴のどこがいいのか分かりませんけど…………栄太郎のこと、頼みます」 そっぽを向いて呟いた彼女に思わず苦笑する。まったく、素直じゃない。 「で、お前は?また新撰組に戻るのか?」 「ええ。今の私の居場所はあそこですからね。先に行って下さい。私はちょっと休んでから帰りま「華乃!」…す?え?」 驚いて華乃が声のした方を振り返ると、そこには息を切らして佇む永倉の姿があった。 「な、永倉さん…?」 華乃は目を丸くする。どうして彼がここに。 「はぁ…、やっと見つけた…」 膝に手を置いて乱れた息を整える永倉。彼の前髪は汗で額に貼り付いていた。 「ど、どうしてここが分かったんですか?」 「街中を探し回っていたらこっちから血臭がしてきたんだ。まさかと思って来てみれば……案の定だ」 「血臭…?」 華乃は眉をひそめ、クンと衣服を嗅いだ。 なるほど。血の匂いを嗅ぎすぎて鼻が麻痺しているみたいだ。通りで気づかない訳である。 「遅れて悪かった。どこも怪我はないか?」 焦った様子の永倉から肩を掴まれ、華乃の頬が瞬時に赤く染まった。 「だ、大丈夫ですよっ。心配かけてすみません。ええっと……あ、ありがとう…ございます」 そんな彼女の初々しい反応を見た野口は、堪らずこう叫んだ。 「お前誰だ―――――!!?」 全くの別人ではないか。本当に同一人物なのかと疑わしい。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4896人が本棚に入れています
本棚に追加