第四章:揺れる想い~告白編~

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野口は華乃に対して言ったつもりなのだが、自分が言われたものと勘違いしたらしい永倉から「あ?」と睨まれてしまった。 「オメーこそ誰だよ。こいつを危険な目に遭わせたのはアンタか?」 「いや!いやいやいやっ、どっちかというと痛い思いをしたのは、おー………」 その時彼は見た。 永倉の後ろにいる華乃が握り拳を作り、「もし言ったらテメーどうなるか分かってんだろうなああ?」という雰囲気を醸し出してしたのを。 「………いや、やっぱりなんでもない」 「は?」 「知らないって幸せだよな」 「だから何言って……」 「まぁまぁまぁ。少し落ち着いて下さい永倉さん。あと野口さんは黙ってて下さい永遠に」 「この扱いの差!」 「……こいつほんとに誰だよ。華乃の知り合いなのか?」 「赤の他人に激しく近い知り合いです」 「おおい!ただの知り合いでいいだろ!」 「……私、黙ってろって言いましたよね…?」 「!」 蛇に睨まれた蛙の如く、ピシッと固まる野口。 そして、ようやく静かになったところで華乃が口を開く。 「彼は栄太郎の元部下ですよ」 「……あいつの?なんで奴の部下がお前を襲うんだ」 「栄太郎が私に殺されたと思ってたらしいんですよ。もう誤解は解けましたけど」 「は?まさか生きてることを知らされてなかったのか?」 「忘れられてたみたいですね」 「それはまた……あー…なんだ、その、元気出せ?」 「優しさが痛い!!」 永倉から哀れみの目を向けられ、野口はいよいよ泣きたくなった。 「とにかく、この件はもう片が付きましたので、永倉さんの手をわずらわせることはありませんよ」 「っ…待て、俺はそんなつもりで来たんじゃ……」 「え?土方さんに命令されて来たんじゃないんですか?」 「違う!お前が心配だったから俺は…っ」 「永倉さん……」 「もしかして俺、思いっきり邪魔者?」 完璧除け者にされた野口は呆れたように言い、華乃に蹴り飛ばされた己の刀を拾い始めた。 「俺はもう行く。迷惑かけて悪かったな」 「まったくですね」 「お前……最後まで憎たらしい奴だな」 呆れながらも苦笑する野口は、華乃たちに別れを告げると、その場から去っていった。 「一件落着ですね。私たちも帰りますか?」 華乃がそう永倉に尋ねる。が、なぜか返事がない。 訝しげに思って後ろを振り返ろうとした時、突然背中から強く抱き締められた。
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