第四章:揺れる想い~告白編~

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完璧に凍りついた華乃を見て永倉は呆れた。彼女が、本当に全く全然これっぽっちも予想だにしてなかった、という顔をしていたからだ。 「言っとくが、総司と同じ意味だからな」 一応念を押しておく。 果てしなく鈍い彼女も、ここまで言えばさすがに意味を理解するだろう。 思った通り、華乃の顔がみるみる赤くなった。 「き………」 「き?」 よく聞こえず、俯く華乃に顔を寄せる永倉。すると、 「気でも触れたんですか?」 そうきたか。 永倉は右手で顔を覆った。 「お前……よりによって第一声がそれかよ」 そもそも華乃に、普通の町娘のような反応を期待する方が間違いだったが、だからと言って「気が触れたか」はないだろう。 「だ、だっておかしいですよ!なんでまともな人間性の貴方が私なんかを!?総司さんならまだしも、おかしいです!総司さんならまだ分かりますけど!」 「とりあえず総司に謝れ」 あいつを何だと思ってるんだ。 そんな永倉の冷静なツッコミも耳に入らない様子の華乃は、両手をブンブン振りながら言い続けた。 「と、とにかく落ち着きましょう!」 「お前が落ち着けっ」 「ありえない……まさか…そんな……」 呆れる永倉を余所に、華乃はブツブツ呟く。未だに信じられないようだ。 「気の迷いじゃ……」 「ない」 そう永倉が言い切れば、彼女は困ったような途方に暮れた顔をした。 「……俺の気持ちは迷惑か?」 彼の問いには答えず、視線を下げる華乃。 迷惑な訳がない。ただ申し訳ないのだ。 彼には自分のような血にまみれた女より、千津のように明るく穢れを知らない子の方がずっと似合う。それに… (私のせいで彼が危ない目に遭うかもしれない……) 心配すると言ってくれて嬉しかった。と同時に怖くもなった。 自分は、これからも必要とあらば剣を振るうだろう。すると、その度に彼を危険に晒してしまうかもしれない。そう思うとゾッとした。 山崎さんは私が彼の弱点になると言っていたけれど、それは違う。彼が、私の弱点なのだ。 『距離を取りなさい』 ………言われなくても。 次に華乃が視線を上げた時、そこにもう迷いはなかった。 「……華乃?」 先程と打って変わって微笑みを浮かべる華乃に、永倉は面食らう。様子がおかしい。 「華乃」 もう一度名前を呼んだ。すると彼女は、弧を描いていた唇をゆっくりと開き―……  
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