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「ププッ、駄目だよ小倉ちゃん。お偉~い参謀殿にそんなこと言っちゃあ」
「は?三坊?」
「「参謀」」
山崎と伊東が声を揃えて言う。
「参謀…?て言えば、位の高い指揮官のことじゃないですか。は?誰が?」
「わ、た、し、が」
得意気に伊東が胸を張ると、華乃は思いっきり顔をしかめた。
「はっ、冗談。寝言は土の中で言って下さい」
「小倉ちゃん小倉ちゃん。それ遠回しに死ねって言ってるでしょ」
「ふん。一度で理解できないなんて、君の脳みその小ささが窺えるよ」
「伊東参謀も落ち着いて。女の子相手に大人げないですよ」
「「さっきからうるさいですね。ちょっと黙ってて下さい」」
「……君たちって何だかんだで似た者同士だよね」
小さい声でボソリと呟く山崎。二人の耳に入ったらまた噛みつかれてしまう。
「なるほど。昼間に話してたのはそのことだったんですね」
「そうだよ。まったく、邪魔が入って大変だったよ。ついでにその時、邪魔した誰かさんの除名を進言したんだけど、残念ながら却下されてしまってね」
華乃はせせら笑う。
「浅はかですね。私は新撰組に居候してるだけであって隊士ではないんです。だから貴方に私をどうこうすることは出来ませんよ。もちろん、近藤さんにも、ね」
伊東は華乃の鋭い眼光に気圧され、思わず唾を呑み込んだ。
だが相手はただの小娘だと思い直し、再び余裕を取り戻す。
「自分が新撰組とは無関係だというなら、平助君から離れて貰えないかい?大切な彼を、君の毒牙にかける訳にはいかないんでね」
「残念。それは局長命令ですから。文句があるなら近藤さんにお願いします」
「…………彼の命令には従わないんじゃなかったのかい?」
「別に聞いてもいいなと思った命令には従いますよ」
それは命令とは言わない。
伊東は強くそう思ったがあえて突っ込まなかった。彼女との会話は精神的に疲れる。
「……君と話してると頭痛がしてくるよ」
「それは嬉しいですね」
「く…っこの……」
「はいはいはい!そこまで!」
それまで黙ってことの成り行きを見守っていた山崎が、二人の間に割って入る。
「小倉ちゃん。この子のこと忘れてなぁい?」
千津を見て「あ」と呟く華乃。
「もう、貴方のせいで無駄な時間を過ごしちゃいましたよ。行きましょう山崎さん」
こっちの台詞だ!と激昂する伊東を残し、華乃たちは再び自室に向かって歩き出した。
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