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「とにかく、君には今回の報告を頼みたい。今から俺の部屋に来てくれ」
「分かりました」
永倉は快く了承した。華乃とは顔を合わせにくいところだったし、丁度いいと思った。
「……で?なんでオメーらまでいんだよ」
土方は眉を寄せ、沖田、藤堂、原田、斎藤に向かって言った。
「いいじゃないですか~別に。私も永倉さんに訊きたいことがあるんです」
「あ、俺は、小倉さんがまた迷惑かけたんじゃないかって気になって……」
「ええっと…なんとなく?一人置いていかれるのも寂しいじゃん」
「自分は永倉殿の様子が気になりましたので」
「よし、オメーらの言い分は分かった。とりあえず原田、お前は出てけ」
「え~~!」
「え~じゃねぇ!寂しいからって何だよ!兎かテメェは!?」
途端、沖田が弾かれたように笑いだす。
「あはは!原田さんが兎とか!もう、気色悪いこと言わないで下さいよ」
「……お前ってさりげに酷ぇよな」
知っていたけれども。
土方はショックを受けている原田に哀れみの目を向けた。
「………副長、話を……」
その時、控えめに掛けられた声にハッとする。忘れてた。
「わ、悪い。こいつらは無視していいから報告を頼む」
「はい」
そして永倉は、今回の事件の発端などを簡潔に説明した。
「なるほどな。つまり、最終的には全て小倉のせい、と」
「違いますよ!事件を起こしたのは名無しさんの部下だって永倉さんも言ってるじゃないですか!……どうせ復讐されるんでしたら、やっぱりあの時に殺しとけば良かったんです。私が気を失わなければ……」
憤慨する沖田に苦笑しつつ、永倉は言葉を続ける。
「とにかく報告は以上です。今回は誤解から生じた事件でしたので、もう起こらない筈です」
「どーだかなぁ。小倉は色んなとこに恨み買ってそうだからなぁ…。まぁいい、ご苦労だったな永倉くん。戻っていいぞ」
「あ、はい」
「ちょっと待って下さいっ」
沖田に呼び止められ、永倉は浮かしかけた腰を再度降ろした。
「私も話があるって言ったじゃないですか」
「話?」
「なんで華乃さんだけ先に帰ってきたんです?」
思いもよらぬ質問に、思わず目を見開く永倉。
それがいけなかった。彼の動揺を見逃さなかった沖田は、畳み掛けるように言った。
「もしかして、彼女に告白して振られでもしましたか?」
それはもう、満面の笑みで。
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