第五章:揺れる想い~決着編~

6/11
前へ
/93ページ
次へ
一方、その頃土方の部屋では、永倉によって斎藤の暴走は止められたものの、未だに土方たちの説得は続いていた。 「ほんっとーに、一時の気の迷いとかじゃねぇんだな?」 「……違います」 永倉はいい加減げんなりしてきた。ただでさえ傷心中なのに、これ以上傷口を広げないで欲しい。 そんな時、永倉の心境を察してか、斎藤が助け船を出した。 「土方殿…そろそろ」 「ん?ああ、長い時間引き留めちまったようだな。すまない、永倉くん」 「いえ、心配して下さってありがとうございました。あと、あいつのことは責めないでやって下さい。俺が一方的に好いているだけなので」 「永倉くん……」 なんて健気なんだと、土方は目頭を押さえた。そして彼は永倉の肩に手を置くと、 「まぁ…あれだ。小倉のことは熊に噛まれたとでも思って忘れろ」 「……いや、死にますよそれ」 そこは犬だろ。 そう心の中でツッコミを入れる永倉。 するとその時、それまで黙っていた沖田が不機嫌そうに口を開いた。 「なんですかなんですか。みんな永倉さんばっかり贔屓して。私だって華乃さんのこと好きなのに」 「「「へ~…」」」 どうでもよさげな返事をしたのは土方、藤堂、原田の三人で、斎藤に至ってはもはや無視である。 「え?なんですかその反応の薄さ」 予想外の反応に戸惑う沖田に、土方はやれやれと首を振って言った。 「あのなぁ…総司。俺らは永倉くんだから心配するんだ。彼が道を踏み外してしまわねぇように」 「あれ?じゃあ私は?」 「オメーはもう手遅れだ」 ズバッと切り捨てた土方に、他の皆もうんうんと頷いた。 「なるほど!つまりお似合いってことですね!」 「どーゆー脳内変換!?」 パンっと両手を叩き喜ぶ沖田とは裏腹に、土方は強い脱力感を覚えた。 「とにかく、今日はこれで終ぇだ。お前らはもう部屋に戻れ」 頭を押さえつつ土方が言えば、皆はぞろぞろと部屋を出ていった。……沖田を除き。 「で?オメーはなんで残ってんだ?」 「いや~、なんだか今夜辺り来そうなんですよね」 瞬間、土方の顔色がサッと変わる。 「発作か!?」 すると沖田は、肯定の代わりにへらりと笑った。 「やっぱりお前、昼間から…」 おかしいとは思ったのだ。普段の総司ならば敵を仕留め損なうことはない筈だ。だが、不調だったというなら頷ける。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4896人が本棚に入れています
本棚に追加