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一方、その頃土方の部屋では、永倉によって斎藤の暴走は止められたものの、未だに土方たちの説得は続いていた。
「ほんっとーに、一時の気の迷いとかじゃねぇんだな?」
「……違います」
永倉はいい加減げんなりしてきた。ただでさえ傷心中なのに、これ以上傷口を広げないで欲しい。
そんな時、永倉の心境を察してか、斎藤が助け船を出した。
「土方殿…そろそろ」
「ん?ああ、長い時間引き留めちまったようだな。すまない、永倉くん」
「いえ、心配して下さってありがとうございました。あと、あいつのことは責めないでやって下さい。俺が一方的に好いているだけなので」
「永倉くん……」
なんて健気なんだと、土方は目頭を押さえた。そして彼は永倉の肩に手を置くと、
「まぁ…あれだ。小倉のことは熊に噛まれたとでも思って忘れろ」
「……いや、死にますよそれ」
そこは犬だろ。
そう心の中でツッコミを入れる永倉。
するとその時、それまで黙っていた沖田が不機嫌そうに口を開いた。
「なんですかなんですか。みんな永倉さんばっかり贔屓して。私だって華乃さんのこと好きなのに」
「「「へ~…」」」
どうでもよさげな返事をしたのは土方、藤堂、原田の三人で、斎藤に至ってはもはや無視である。
「え?なんですかその反応の薄さ」
予想外の反応に戸惑う沖田に、土方はやれやれと首を振って言った。
「あのなぁ…総司。俺らは永倉くんだから心配するんだ。彼が道を踏み外してしまわねぇように」
「あれ?じゃあ私は?」
「オメーはもう手遅れだ」
ズバッと切り捨てた土方に、他の皆もうんうんと頷いた。
「なるほど!つまりお似合いってことですね!」
「どーゆー脳内変換!?」
パンっと両手を叩き喜ぶ沖田とは裏腹に、土方は強い脱力感を覚えた。
「とにかく、今日はこれで終ぇだ。お前らはもう部屋に戻れ」
頭を押さえつつ土方が言えば、皆はぞろぞろと部屋を出ていった。……沖田を除き。
「で?オメーはなんで残ってんだ?」
「いや~、なんだか今夜辺り来そうなんですよね」
瞬間、土方の顔色がサッと変わる。
「発作か!?」
すると沖田は、肯定の代わりにへらりと笑った。
「やっぱりお前、昼間から…」
おかしいとは思ったのだ。普段の総司ならば敵を仕留め損なうことはない筈だ。だが、不調だったというなら頷ける。
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