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土方は急いで薬の支度をする。
「ったく、無茶しやがって」
「仕方ないですよ。あの娘を死なせたら華乃さんが悲しむんですから。それに、久々に身体を動かすいい機会でもありましたし」
そこで沖田はふと真剣な顔をすると、目を細めて土方を見た。
「……みんなには言わないで下さいよ?」
己の病のこと。
すると土方は呆れたように言った。
「んな何度も釘を刺さなくったって分かってる。けど、いつかはバレるぞ?」
「その時はその時です。でも、それまでは同情されるのはごめんですから」
「とはいえ、小倉ともたまに稽古してんだろお前。あれも負担が掛かってんじゃねぇのか?」
「………」
「知らねぇ内にお前に無理させてるって知ったら、あいつ怒るだろうなぁ……」
主に俺に。と、土方は想像してゾッとした。洒落にならない。
「……やっぱ小倉も駄目か?」
「な!?一番知られたくないですよ!もう手合わせしてくれなくなるじゃないですかっ」
「もしバレたら殴られるぞ」
「よけます!」
あ、なんだ。一応覚悟はしているのか。
思わず土方は感心した。じゃなくて。
(……勘の鋭い奴は気づいてそうだがな)
たぶん斎藤くんは確実だと思った。彼はたまに総司を心配する素振りを見せていた。
(あとは蒸とか……てゆうか、案外みんな気づいてそうだよなぁ)
実はみんな、総司の性格を考慮して黙ってるだけじゃないかと思う。何も言わないのは、きっと総司が話すまで待っているのではないか。
(……ま、あくまで予想だけどな)
そうして思考を終わらせると、土方は沖田の為に薬を煎じ始めたのだった。
そして翌日。
「ん……」
「あ、目が覚めましたか?」
まだ眠たげに瞼を擦る千津を、華乃は上から覗き込んだ。
「あ…れ…?ここは…?」
「私の部屋ですよ」
華乃は、ムクリと起き上がる千津の背中に手を添えながら言った。
「昨日、貴女は気を失ってしまってたので、一晩だけこちらに泊まって貰ったんです。あ、ちゃんと家の方には連絡してますから安心して下さい」
「気を…?」
そこで昨日の記憶が蘇ったのだろう。ブルリと肩を震わせる千津に、華乃は申し訳なさげに眉尻を下げた。
「怖い思いをさせてすみませんでしたね」
「そんなこと…!」
千津は慌てた。そもそも、彼女の忠告を聞かなかった自分が悪いのだ。
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