第五章:揺れる想い~決着編~

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珍しく殊勝な様子で頷いた華乃に、土方は内心ギクリとした。 おかしい。いつもなら嫌味が倍になって返ってくる筈なのに。 「お、小倉?や、真に受けるなよ?今のは冗談だからな?」 「は?何がです?貴方の存在がですか?」 「っ…オメェなんか早く行っちまえぇぇえ!!」 やはりこいつは心配するだけ無駄だと、改めて思い知った土方であった。 「何怒ってたんだあの人?」 訳も分からず部屋を追い出された華乃は、首を傾げながら千津の元へと向かっていた。 一人で自分を待つ彼女を案じ、自然と早足になる。――それがいけなかった。 玄関へと向かう曲がり角に差し掛かった瞬間、突然現れた壁に勢いよくぶつかってしまった。 柔らかい壁は多分隊士の誰かだろう。持ち前の反射神経で尻餅はつかずに済んだものの、大きくバランスを崩した華乃はたたらを踏みながら数歩退がった。 今のは完全に自分の失態であったと、華乃が詫びの言葉を口にする前よりも早く、相手からの声が掛かる。 「悪いっ、ぼーっとしてて、大丈夫……か?」 「………」 「………」 「………」 ――ダッ! 「っ…待て!」 脱兎の如く逃げ出そうとした華乃の腕を、寸でで捉える永倉。 永倉から逃れようとしばらく抵抗してた華乃も、好きな人相手に実力行使(またの名を急所蹴り)に移す訳にもいかず、諦めて大人しくなった。 「華乃……」 名を呼んだ瞬間、ビクリと身を固くした彼女に、永倉は傷ついた表情を見せた。 「昨日は…突然悪かった」 掴んでいた彼女の腕を解きながら、静かに言葉を紡ぐ。 「応えなくていい、忘れてくれてもいいから」 だから、と、彼は続けた。 「頼むから、俺を避けないでくれ。避けられるのが……一番辛い」 華乃はハッとすると、次いで永倉の顔を見つめた。しばらく見つめ合い、ポツリと呟く。 「……いいんですか?」 「え?」 「今までみたいに…話しかけても……」 避けられるのを恐れていたのは己の方だ。それならば、いっそ先にと思っていた。 けれどもし許されるのなら… 「……側にいても……いいんですか…?」 恐る恐る訊いてきた彼女に、永倉は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。 「当たり前だ」  
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