第五章:揺れる想い~決着編~

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そして二人は、千津に気づかれないようひそひそと会話した。 『ちょ、ちょっと永倉さん、彼女の言ってる人って本当に総司さんですか!?えらく美化されてません!?』 『美化ってゆーか、もう既に別人だな。そもそもあいつは自分を俺なんて言わねぇし』 『は!もしかして、寝ている間に夢と現実をごっちゃにしちゃったんでしょうか?』 『……ありうるな』 お世辞にも紳士とは言い難い普段の沖田の姿を思い浮かべ、二人はげんなりと溜め息を吐く。 「ん?二人ともどないしたん?」 「「なんでもない」」 「でも、なんか顔色が……」 「「気のせい(だ・です)」」 乙女の夢は壊さないでおこうと心に誓う二人であった。 (でもそうか……) その時、華乃はふと思った。もう彼女は永倉さんを好きではなくなったのか、と。 「………」 「華乃?どうした?何か嬉しいことでもあったのか?」 俯いてはにかむ華乃を訝しんで声を掛ける永倉。すると華乃はパッと顔を上げ、にっこりと無邪気な笑みを彼に向けた。 そして爆弾発言を投下。 「ええ、貴方を独り占めできるようになって嬉しいんです」 ――ピシリ。 永倉は石となった。 「ええっと……永倉さん?」 自分の問題発言に気づかない華乃は、固まる永倉の顔を覗き込もうとしたが、その瞬間、ガシリと顔を鷲掴みされた。 「うわっ」 「…………見んな」 「いやちょっと首!首が痛いんですけど!」 「お前、それ天然か?それともわざとか?」 「はい?」 両手を使って永倉の手を引き剥がした華乃は、訳が分からず首を傾げた。なぜならば、目の前の彼が頭を抱えていたからだ。 「ど、どうしたんです?頭でも痛いんですか?」 「………いや、分かってる。どうせ深い意味はないんだろ……分かってるんだ……分かってるんだが……」 「な、永倉さん…?」 先程からブツブツと何やら唱えてる永倉に、華乃はますます疑念を抱く。 もしかして千津が原因なのだろうかと振り返った華乃は、そこでカッと目を見開いた。 「って、あー!お千津さんがいない!!」 あの無駄に行動力溢れる少女のことだ。きっと沖田の部屋へと向かったのだろう。 「私連れ戻してきます!」 言うが早く駆け出した華乃を余所に、永倉はまだ先程の衝撃から立ち直れないでいた。 そしてこの様子を、密かに見ていた山崎が思わず涙を拭ったのは、また別のお話である。
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