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「忘れ物はない?」
「なーい!」
いよいよ、都会に行く日。
何故、都会に行くか説明していなかったが、理由は明快。
勿論、表彰式が都会で行われるからだ。
で、今は新幹線の改札の近くにいる。
「都会は、危ない人が多いから気をつけるのよ?もし、何かあったら直に……」
「あぁもう分かった!大丈夫」
あたしはどこに自信があるわけでもなくそう言った。
心が弾んでいる。
「母さんは心配で堪らないけどね。まぁいいわ。はい、チケット」
我が母親が懐からチケットを取り出し、あたしに渡す。
それには、福重⇔都会と書いてある。
都会の文字を再度確認して心が弾む。
「どうも。まぁ大丈夫。何かあったら叫ぶし!」
「そうね。確かに、日和は声だけは無駄に大きいから……」
そう言い掛けて我が母親は言葉を切った。
どうせ声の大きい女ですよ!!
途中で止めるくらいなら最初から言わないでほしい。
「あと、お土産よろしくね。都会なんて滅多に行けないから」
「分かった!」
もう、旅行気分だ!!
新幹線だって中学校の修学旅行ぶりだし。
「それじゃ、行ってらっしゃい」
そう言うと、我が母親は手を軽く振った。
あたしはその言葉を聞いて、改札にチケットを通す。
振り返るとまだ母親はいた。
あたしは気にせず階段を上る。
出発時間を確認し、プラットホームで待っている。
その間、あたしは都会の町並みを想像する。
きっと高貴で、高い建物が所狭しと並べられて……。
と妄想すれば尽きることは無い
あぁ……。都会!!
待ってろ!!!!
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