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しかし、それは世界が途絶えたものであるということではない。世界は繋がっている。繋がりのある終わりと始まり。繋がるには、終わりがなければ繋がらない。だから始まりと終わりではなくて、終わりと始まり。
「そう、それはそれで結構ね。褒めてあげるわ」
そして、世界の始まりを探すのが生存の理由であり、自分の存在意義なのだと彼女は語った。もし確かに終わりから始まるのであれば、世界の始まりの果てに終わりがなければならない。
「貴女の従僕なれば当然のこと」
それは虹の根元を探すよりも困難で、空の彼方に辿り着くより気の遠くなることである。結論を言えば“ない”のだ。常に終わりが始まりの先にあるのならば、果てはない。現に辿り着きはしなかった。ひとまず、これまでは。一度たりとも辿り着かなかった。
「そうかしら」
彼女の言葉をさらうかのように木枯らしが吹く。葉の落ちた木は枝を震わせ、葉の残る木は幹を揺らした。木々のざわめきが収まるのを待って、彼女は再び口を開いた。
「当たって然るべきことなんて面白くはないわ」
空には雲はなく、冷たい青のどこに木枯らしが去っていくのかは分からない。雲があったところで分かる訳ではないが、あれば見当がついただろうに、と思う。ここは風を知るには木々が邪魔だった。
「私の従僕たる以上を示したから褒めたのよ。喜びなさい」
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