惑乱Cavatina

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  一年前。 私は第一志望の高校を落ちた。 それが必死で勉強し、全部をかなぐり捨ててまで頑張った結果で、私は泣くより前に呆然とした。 意味が解らなかった。 神様から見捨てられ、母親から見限られ――私の人生は捻れた。 崩れ、壊れて、歪んで、狂った。 虚無がざらりと心を覆う。 ぽっかりと口を開けた絶望。 歯車の狂ってしまった私は、目で見えるほどに酷く崩れ落ちた。 私は心の穴を仮初の愛で埋めた。 恐ろしいほど愛に餓えた私は、何人もの人間と付き合った。 偽物の愛で心を満たすために。 それが自分の欲しかった、本当の愛情なんかじゃないと分かっていながら、それを求めるのを止められなかった。 私に溺れさせて、相手の人生を滅茶苦茶にしたかった。 未来なんか何も判らない。 ただ私は、今を狂いながら、毎日を汚しながら生きていた。 高校に入って、家では涙を流すことが格段に多くなった。 中学の頃に思い描いていた未来と現在があまりに違いすぎて。 自身を醜いと蔑みながら、そうでもしないと迫ってくる虚無感に押し潰されそうな気がして。 誰でもいい。 私を受け止めて欲しい。 私のことを認めて欲しい。 私に――愛情を注いで欲しい。 何人も籠絡したところで、願いは叶わないと知っているのに。 私の心神と身体には、紛い物の愛が多量に蓄積していた。 和也とは高校で出逢った。 高い背丈に鍛えられた身体。 そして、穢れを知らない、まるで処女のように初々しい思考。 唐突に欲しくなった。 他の男のように、私のせいで堕ちていく姿が見たくなった。 私のせいで壊れて欲しかった。 私のために狂って欲しかった。 和也は驚くほど奥手だった。 席が隣だったのに、マトモに話そうともせず、私と目が合うと、いつも気恥ずかしそうに避けて。 とても可愛らしかった。 和也を見ていると、すごく心が穏やかになって、安心出来た。 私が知らない感情だった。 出逢ってから半年。 私たちはメールアドレスを交換し、でも和也は全くメールしてこなかった。 どうにか彼を堕とそうと、和也の目に触れるように何人もの異性といちゃついた。 何故こんなにも和也に固執するのか、自分でも解らなかった。 ただ、どうしても欲しかった。 だから、和也からメールが来た時私の心は最大限に弾んだ。 半年間、待ち続けた。 ようやく、私のものになる。
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