病んだ女がやって来た

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俺、橘廉市【たちばなれんいち】。 両親が海外で働いている為、一軒家に独り暮らししている。 独り暮らしだからって、俺は怠惰な生活は送らない。 きちんと朝五時には起きて、弁当を作り、朝飯を食らい、規定の時刻に学校へ向かう。 友人達は少しは怠惰な生活してもいいんじゃないか、とか言うが俺は何事も完璧じゃないと気が済まないんだ。 だから、勉強だってしっかりやってる。 ……まあ、学年一位ではないが。 そんな、話は置いといて、今朝もいつも通りに家を出た。 「冷え込んできたな……」 季節は秋だ。限りなく冬に近い、な。 最近は朝の冷え込みも厳しくなってきた。 「寒い日には鍋かな?よし、今夜はちゃんこだぜ」 そう独り言を呟きながら俺はいつもバスに乗る停留所までやって来た。 「お、いつも通りだな、廉市」 「よ、虎」 そこには俺と同じ学ランを着た、額に傷を持った赤毛の女がいた。 浅見影虎【あさみかげとら】。こんな名だが、女だ。 三人姉妹の末っ子だが、男の子が欲しかった父親にこんな名前を付けられ、更に男として育てられたって、よくあるパターンだ。 因みにあだ名はやはり『虎』。 本人も気に入っているらしい。 「そうだ、廉。お前、英語の予習やって来たか?」 虎が言った。 こいつ、またやり忘れたのか。 そんでまた俺のノートを当てに…… いつもは見せてやるが、たまには鬼にならんとな。 「やって来たが、今日からは見せん。自力でやりなさい」 ピシャッとそう言ってやった。 「なんだよ、いいじゃんかよぉ……」 そしたらその途端、虎はいじけだした。 「いじけても見せないぜ?」 しかし、俺はそれを見捨て、やって来たバスに乗り込んだ。 バスは俺と虎の通う私立鬼瓦学園高校方面へと向かっていった。
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