そして、メイドもやってきた

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次に俺達は格闘ゲームのエリアにやって来た。 「やっぱ格ゲーだよな~」 虎がうきうきしながら『ばーちゃんファイター』の筐体に向かう。 『ばーちゃんファイター』とは、世界各国の色んな婆さんが集まり、世界一を決めるわけのわからない格闘ゲームだ。正直萎える。 「これやっぱ馬鹿な設定だよな~」 とか言いながら、虎は百円玉を投入すると、『うめ』という日本人の婆さんを選択する。 『腕が鳴るわい』 選択されたうめが呟く。鳴るって腕の骨が折れる音っすか? 隣では静夜やマーナ、真綾も生暖かい視線をこの『ばーちゃんファイター』に送っている。 「老人虐待ですね……」 「ひどいです……」 「気分が悪いわ……」 いや、生暖かい視線何かじゃない、嫌悪感溢れる視線を送っていた。 どうやら、お年寄りをいたぶる設定が彼女らを怒らせたようだ。 実を言うと、俺もなのだが。 「虎。これはあまりに不評だ。俺達向こうにいるからな」 「ああ。何か、俺もこれは失敗だと思ったんだ。わざと負けるから向こうで待っていてくれ」 虎、だったら選ぶなよ…… 兎に角、虎を除いたメンバーは中央のベンチに移動した。 「酷い設定でしたね」 「お婆ちゃんがかわいそうなのです」 「メーカーは何処かしら?文句言いたいわ」 三人は『ばーちゃんファイター』にかなりの怒りを覚えたようだ。 「俺、飲み物買ってくる……」 俺はそう言ってその場を離れると、自販機コーナーに向かった。 「静夜は緑茶だよな……。マーナちゃんと三月は紅茶でいっか……」 俺が商品選びに悩んでいると。 「お兄さん」 一人の少女が声をかけてきた。 「……え?」 俺は声の方に顔を向ける。 そこには桃色のショートカットの少女がいた。 「あたし、桃山萌佳【ももやまもえか】。お兄さんは?」 桃山萌佳と名乗った少女が上目遣いに聞いてきた。 「橘廉市っすけど……」 「じゃあ、れんれんだ」 萌佳はそう言うとニカッと笑う。 「初対面に失礼だな、あんたは」 俺は少しムッとした。 なんだ、この子は? 何となく逆ナンであるのは分かるが、にしても馴れ馴れし過ぎだ。
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