そして、メイドもやってきた

16/19
前へ
/77ページ
次へ
「いいじゃんいいじゃん、れんれんって私が呼びたいんだもん」 俺の苛立ちを気にせず、萌佳は俺の腕にしがみついてきた。 それで分かったのだが、意外に胸が…… 「気持ちいい?Fカップだよ」 そうかそうか、F……って、おい!! 「聞いとらんわ!!」 「えー?だって、腕に当たる私の胸をチラチラ見てたじゃん」 俺の突っ込みに萌佳は悪魔の笑みを浮かべながら言った。 何なんだよ、この娘は…… 「はあ……。どうでもいいけど、離せよ。連れ待たしてるんだからさ」 俺は呆れながら萌佳の手を振り払う。 「駄目だよ~。節介格好いい男の子見つけたのに」 萌佳がそう言った。 格好いい?俺が? 「そ、そうか?」 なんかいい気分になってきた。 「ねぇ、せめてプリクラくらいいいでしょ?」 萌佳がせがむ。 まあ、それくらいならいいかな~、と思い、 「一枚だけな」 と萌佳とプリクラの筐体に向かおうとしたその時。 背筋が凍った。 「あれれ?何か寒いよ」 萌佳もその寒さを感じたらしい。 恐る恐る後ろを向く。 「れ~んく~ん……」 そこには雪女……もとい、静夜がいた。 手には良く研がれ、美しく輝く包丁。目は生気のない濁った瞳。 マジギレしてる? 「も、桃山だっけ?」 「うん」 「離れろ」 そう言って俺は萌佳を突き放し、静夜の肩を掴む。 「落ち着け!!落ち着いてくれ、静夜!!ここで包丁はまずい!!」 「浮気しましたね……」 俺の必死の声は静夜に届かない。 「判決死刑……」 そうこうしている内に包丁が俺を襲う。 「おわっ!?やめるんだ、静夜~!!」 その後は地獄だった。 暴走した静夜を、大の男が八人がかりで止めた。 俺は真綾にきつく説教された。 マーナは気にせず紅茶を飲んでいた。 虎は笑い、萌佳は諦めないからね、と去って行った。 静夜は我に帰り、おろおろ。 そして俺達はゲーセン出入り禁止になった……
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2981人が本棚に入れています
本棚に追加