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「いいじゃんいいじゃん、れんれんって私が呼びたいんだもん」
俺の苛立ちを気にせず、萌佳は俺の腕にしがみついてきた。
それで分かったのだが、意外に胸が……
「気持ちいい?Fカップだよ」
そうかそうか、F……って、おい!!
「聞いとらんわ!!」
「えー?だって、腕に当たる私の胸をチラチラ見てたじゃん」
俺の突っ込みに萌佳は悪魔の笑みを浮かべながら言った。
何なんだよ、この娘は……
「はあ……。どうでもいいけど、離せよ。連れ待たしてるんだからさ」
俺は呆れながら萌佳の手を振り払う。
「駄目だよ~。節介格好いい男の子見つけたのに」
萌佳がそう言った。
格好いい?俺が?
「そ、そうか?」
なんかいい気分になってきた。
「ねぇ、せめてプリクラくらいいいでしょ?」
萌佳がせがむ。
まあ、それくらいならいいかな~、と思い、
「一枚だけな」
と萌佳とプリクラの筐体に向かおうとしたその時。
背筋が凍った。
「あれれ?何か寒いよ」
萌佳もその寒さを感じたらしい。
恐る恐る後ろを向く。
「れ~んく~ん……」
そこには雪女……もとい、静夜がいた。
手には良く研がれ、美しく輝く包丁。目は生気のない濁った瞳。
マジギレしてる?
「も、桃山だっけ?」
「うん」
「離れろ」
そう言って俺は萌佳を突き放し、静夜の肩を掴む。
「落ち着け!!落ち着いてくれ、静夜!!ここで包丁はまずい!!」
「浮気しましたね……」
俺の必死の声は静夜に届かない。
「判決死刑……」
そうこうしている内に包丁が俺を襲う。
「おわっ!?やめるんだ、静夜~!!」
その後は地獄だった。
暴走した静夜を、大の男が八人がかりで止めた。
俺は真綾にきつく説教された。
マーナは気にせず紅茶を飲んでいた。
虎は笑い、萌佳は諦めないからね、と去って行った。
静夜は我に帰り、おろおろ。
そして俺達はゲーセン出入り禁止になった……
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