午前十時

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「ねぇ、何をみているの?」 女の子が男に尋ねる。 「人混みさ。他に見るものもない」 男が素っ気なく答える。 「私は?」 女の子が男の顔を覗き込む。 「人混みより私を見ていた方が愉しくないかしら」 男は女の子の顔をみる。綺麗な顔だ。目が大きくて迫力がある。 「君はきっと異性にもてるね」 男は煙が女の子に当たらないように喋る。 女の子はしばらく男の顔をじっと見つめ、ほどなくして「どうだっていいわ」と呟き少し男に身体をよせた。
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