君に花を

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どれだけ何を言っても颯は首を横に振った。 分かってる。 もう僕には時間がない。 手の中の鈴が軽くなっていく。 「颯、お願いがあるんだ」 「え?」 「庭に、庭に花を咲かせてくれないかな?」 「花?」 「そう。この先ずっと絶やすことなく長く」 「どうして?」 「俺はそれから颯を見るから。だからなるべく沢山の花を咲かせて?」 しばらくの生きる理由をそれで成り立たせて。 「忘れないで颯。俺はどんな颯の未来も祝福するから」 最後に颯の唇に僕を落とした。 勘違いなのか どうなのか でも確かにその時あのぽてっとした感触が僕を包んだ。 閉じていく消えていく中で僕は幸せを噛み締めた。 僕は幸せです。 世界一幸せです。 だって颯に会えたんだから。 1番長く颯とすごせたんだから。
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