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寒空の下、すれ違う人々はどこか足が軽そうに見える。
12月23日の夜
男は今とある扉の前にいる。
ガチャ
扉の開く音があなたの帰りを教えた。
「お帰り。」
「あぁ。ただ今。」
あなたが帰って来た時に必ず交わすキスを済ませ2人小さなテーブルを挟んだ。
「おっ?今日は俺の好きな唐揚げか。」
「うん。残さないで食べてね。」
「分かってるって。綾。」
その言葉と同時に2人はおかずに手を延ばした。
「隆司最近帰り遅いけど何かあるの?」
綾の問いかけに少しだけ時間置いて俺は口を開いた。
「んま~簡単に言えば綾と綾の中にいる子の為かな。」
そう言いながら隆司は綾を見つめた。
去年の綾の誕生日...正確に言うと去年の12月24日。
俺等は一緒に住み始めた。
安いアパートを借りて2人で暮らしている。
「そっか...ねっ。この子男の子かな?それとも女の子かな?」
そう言いながらまだ膨らんでないお腹を摩る綾。
「いやまだ二ヶ月だろ?さすがに分かんないって。」
そう、今綾の体の中には新しい命がある。
それを知った日は驚いたがそのおかげで今こうして頑張れる自分がいる。
「あっ。そーいやー三春から何か来てたぞ。」
「ホントに?」
そう言いながら隆司は縦長の封筒をテーブルの上に置いた。
「何だろう?」
不思議そうな顔をして中を取り出すと2枚のチケットと1枚の紙が入っていた。
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