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カツコツカツコツ。
アスファルトに響く、僕の靴音。
本当にコート着てくればよかったと寒さに後悔しながら身を竦めて空いていた左手を小さなポケットに突っ込んだその瞬間、一陣の冷たい風が吹いた。
風が強くて僕は反射的に目を閉じた。
そして目を開けたら、そこには。
黒い、壁。
体は止まらない。
手で止めようにも距離が五センチも無い。
僕はそのまま全体重でぶつかった。
無論、寒くて背筋を伸ばしていなかったが為に顔面からモロに。
「ふごぉあぉっ!!」
冗談抜きで痛い!!
何でだよ!!いつも無いじゃんこんな壁!!
てか今無かったじゃんかよ!!
何!!トラップ!?何コレ!!
痛くて痛くて当然転がる。
手をポケットに入れたのが仇になった。
クソ痛くて、体を反転させたその時。
「……そのまま、顔を上げるな」
僕の横で声がした。
そちらを見れば壁を地面のようにしてしゃがんで居る男が居た。
何言ってんだ、てか何で壁に居るんだ。
訳が分からず、僕は相手の言葉を無視して壁から体を離そうとしたその直後。
僕の眼前に、一本の腕が現れた。
いや、現れた訳じゃない。
破裂音と一緒にサイドに居る男が僕の顔の前に腕を伸ばしただけだった。
めちゃめちゃギリギリ。
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