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その人は私の申し出を辞退した。
些細なことだよと然り気無く私の腕を外した。
「でも、私の気が済みません。お願い、お礼をさせて」
自分でも何でこんな一生懸命になっていたのか判らなかった。
別に好みのタイプでもなかった。
私はそんなに義理堅く、恩着せがましい性格でもない。
でもこのまま知らない人になるのはなんか嫌だった。
「一期一会、ですよ」
あからさまに困っていた顔のその人に意味不明なこと言って、無理矢理スマホを強引に奪って勝手に操作した。
偶然にも同じ機種だった。
私そんな強気でどうしたの!?と驚いている自分。
「……後で連絡します」
仕方ないなってため息つきながらスマホ受け取ろうとした彼の左手。
陽射しを受けて、薬指辺りが眩しく光った。
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