偽りの日々。

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 真琴に残ったものは、父親が会社を起こした際に負債した多額の借金と住宅ローン。  住宅ローンに関しては、事故を起こした相手側からの慰謝料で返済できたが、父親が背負った借金は、いくら残った慰謝料と家を売ったお金を合わしても返済できる額ではなかった。  その上、父親は仲の良い同業者の保証人にもなっていたため、負債が大きくなっていたのだ。  学校を辞めて、働きながら父親が背負った借金を返済していく覚悟を決めていた真琴の前に、突如として要が姿を現したのだ。  要は父の弟で、兄が失踪した後に父親の企業を継いだ。  親の命令で兄の婚約者と結婚し、普通の家庭を築いていたのだが、既に夫婦の仲は冷め切っている。  そこへ真琴の両親の訃報を知り、慌てて葬儀に駆けつけたのだ。  後で聞いた話によると、要の父親は真琴の父を勘当したものの、やはり気になっていたらしく、秘密裏に興信所を使って情報を常に得ていたのだ。  調査依頼した本人が亡くなった後は要が引き継ぎ、今回の件を知ったというわけだ。 『今日から私が君のお父さんになろう。』  優しい笑みと声で、真琴は思わず差し伸べてくれた手を取ってしまった。  あの時、どうして要の申し出を受けてしまったのだろうか。  きっと、独りになるのが怖かったのかもしれない。  彼の申し出を受けたその晩、真琴は要に強姦された。  突然のことで驚愕した真琴だが、要は二人きりになる時間を狙っていたのだ。  そして分かったことは、養子になる=愛人になることだった。  拒むと、真琴は借金を背負ったまま独りで生きていくことになる。  受け入れると、借金は全て肩代わりしてもらい、転校してしまうが学校にも通える。  成人するまで、後見人になってくれる。  真琴には拒否権がなかった。  告別式が終わって一週間後、要が迎えに来た。
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